膝のお皿の下が痛い方へ|膝蓋下脂肪体の痛みと変形性膝関節症との違い


「特にケガをした覚えはないのに、お皿の下が痛い」

「押すとピンポイントで痛む」

「最初は違和感だけだったのに、歩くと気になるようになってきた」

このような膝の前側の痛みで相談に来られる方がいます。

お皿の下が痛むときに考えられる状態の一つが、膝蓋下脂肪体の痛みです。
聞き馴染みのない症状名ですが、よく診る症状の一つです。

年代によっては、整形外科で変形性膝関節症と診断されることもあります。
ただ、レントゲンで変形が見つかったことと、今感じているお皿の下の痛みがすべて変形から出ていることは同じではありません。

必要以上に焦らず、痛む場所、押したときの反応、膝の伸び方、歩き方、最近の活動量を確認しながら、早めに対策することが大切です。

キッカケはありませんでしたか?

「何もしていない」と感じるときも、痛くなる前を少し振り返ると、普段とは違う負荷が重なっていることがあります。

  • 旅行でいつもより長く歩いた
  • 慣れない靴で買い物をした
  • 久しぶりにたくさん歩いた
  • 階段を使う回数が増えた
  • 立ち仕事が続いた
  • ランニングや筋トレの量を少し増やした
  • ジャンプや膝を伸ばし切る動作が増えた

転倒やひねりのような大きな外傷がなくても、歩く距離、立っている時間、階段、運動量などが少しずつ増えることがあります。

そのため、「あれ、なんとなく膝が気になる」という程度から始まることもあります。

一つの出来事だけを原因と決めず、痛みが出る前の数日から数週間で何が増えていたかを確認します。

膝蓋下脂肪体はどこにある組織ですか?

膝蓋下脂肪体は、膝のお皿である膝蓋骨の下にある柔らかい組織です。

お皿とすねの骨をつなぐ膝蓋腱の表面ではなく、その奥側にあります。大腿骨、脛骨、膝蓋骨に囲まれた膝の前方で、膝の曲げ伸ばしに合わせて形を変えます。

クッションのように負担を受ける役割があり、血管や神経も豊富です。刺激や圧迫が続くと、膝の前側の痛みに関係することがあります。膝蓋下脂肪体の評価と治療に関するレビュー


膝蓋下脂肪体は、お皿の下で膝蓋腱の奥側にあります。
黄色からオレンジ色で示した部分が膝蓋下脂肪体です。

お皿の下では何が起きているのでしょうか?

膝蓋下脂肪体は、膝の動きに合わせて形を変えています。

ところが、膝を強く伸ばし切る動作が続いたり、普段より歩行や運動が増えたりすると、脂肪体と周囲の組織に刺激が加わることがあります。
刺激が続けば、腫れや痛みにつながる場合があります。

神経が豊富な組織なので、見た目には大きな変化がなくても痛みを感じることがあります。
組織を調べた研究でも、膝蓋下脂肪体と隣接する滑膜に、痛みの伝達に関係する神経線維が確認されています。膝蓋下脂肪体と滑膜の神経分布を調べた研究

起こり方を分かりやすく単純化した模式図です。
圧迫や刺激があれば必ず炎症になる、という意味ではありません。

膝の前が痛いときは場所を分けて見ます。

「膝の前が痛い」といっても、指し示す場所は人によって違います。

  • お皿の下が中心なら、膝蓋下脂肪体や膝蓋腱などを確認します
  • 膝の内側が中心なら、関節、半月板、内側の腱の付着部などを確認します
  • お皿の周囲や奥が中心なら、お皿と大腿骨の間などを確認します

そのうえで、膝蓋下脂肪体の関与を考えるときは、次のような訴えも確認します。

膝蓋下脂肪体の関与を考えるときは、次のような訴えを確認します。

  • お皿のすぐ下が痛い ここ重要!
  • 膝蓋腱の左右がピンポイントで痛い
  • お皿の下を軽く押すと痛い ここ重要!
  • 膝を伸ばし切ると前側が痛む
  • 立った状態で膝を後ろへ押し込むと違和感がある
  • 歩行や階段のあとに痛む
  • お皿の下が少し腫れぼったい ここ重要!
  • 「何となく前が痛い」と感じる


押して痛い場所は判断材料の一つですが、場所だけで膝蓋下脂肪体の痛みと決めることはできません。

膝蓋腱、膝のお皿と大腿骨の間、半月板、滑膜など、別の組織でも前側の痛みは起こります。
ご自身で強く押し続けたり、何度も膝を伸ばし切って痛みを再現したりしないでください。

若い人にも起こります!

膝蓋下脂肪体の痛みは、高齢者だけの問題ではありません。

スポーツ、ランニング、ジャンプ、打撲、膝が反りすぎる動作などをきっかけに、若い人でも症状が出ることがあります。

若い方の膝前面痛にも、膝蓋腱や膝のお皿周囲など複数の原因があります。
年齢だけで判断せず、痛む場所と動作を確認します。

変形性膝関節症とは違うのでしょうか?

膝蓋下脂肪体の痛みと変形性膝関節症は、別の言葉です。
ただし、実際には両方が同じ膝に存在することもあり、症状だけで完全に分けるのは簡単ではありません。

中高年では、レントゲンで変形性膝関節症の変化が見つかり、整形外科で変形性膝関節症と診断されることもあります。

レントゲンの診断は大切です。そのうえで、今感じているお皿の下の痛みがどこから出ているのかを確認します。

確認すること

膝蓋下脂肪体の関与を考えるとき

変形性膝関節症で確認すること

痛む場所

お皿の下、膝蓋腱の左右など

関節の内側を含む膝周囲。場所は人によって異なる

押した反応

お皿の下に局所的な痛みがあることがある

関節周囲に圧痛が出ることがある

動作

膝を伸ばし切ると痛むことがある

歩行、立ち上がり、階段、曲げ伸ばしなどで痛むことがある

そのほか

前側の腫れぼったさが出ることがある

こわばり、可動域の低下、膝全体の腫れなどを伴うことがある

これは診断表ではありません。
症状は重なり、痛む場所にも個人差があります。

2008年の文献整理では、レントゲン上の変形と膝の痛みの一致率は研究によって大きく異なっていました。
レントゲンだけでなく、症状や身体所見を合わせて評価する必要があるとされています。
症状とレントゲン所見の一致度を調べた研究

変形があることと、今のお皿の下の痛みがすべて変形から出ていることは同じではありません。

診断名だけで必要以上に焦らず、痛む場所、押したときの反応、膝の伸び方、歩き方、最近の活動量を確認し、今の痛みに合った対策を考えます。

押すと痛い場所はどこですか?

膝蓋下脂肪体の関与を考えるときは、お皿の下の左右から中央にかけて、軽く触れたときの反応を確認します。

  • お皿の下に局所的な圧痛があれば、脂肪体や膝蓋腱などを確認します
  • 膝の内側が痛ければ、関節、半月板、内側の腱なども確認します
  • お皿の周囲や奥に痛みを感じる場合は、お皿と大腿骨の間なども確認します

「お皿の下を押すと痛い」ことは大きな手がかりですが、場所だけで断定はできません。
動作、腫れ、可動域、外傷の有無も合わせて見ていきます。ご自身で痛みを探すために強く押したり、何度も繰り返したりしないでください。

痛み始めは炎症と負担を早めに調整します

痛みが出始めた時期は、まず痛みや腫れを増やしている刺激を減らすことが大切です。

お皿の下を何度も押す、膝を勢いよく伸ばし切る、痛みが増える距離まで歩く、階段を繰り返すといった動作は一度減らします。

必要に応じて、消炎鎮痛成分を含む湿布や塗り薬で症状を抑えることも選択肢です。
外用の消炎鎮痛薬には、急性の筋肉や関節の痛みを軽減する根拠がありますが、膝蓋下脂肪体だけを対象にした研究ではありません。
外用消炎鎮痛薬に関する系統的レビュー

皮膚がかぶれる、使用後に症状が強くなる場合は中止してください。
持病、服薬、妊娠などがある方や、どの商品を選ぶか迷う方は、医師または薬剤師へ確認してください。

状態に合えば、サポーターを使ってお皿の下へかかる負担や不安を減らしながら、歩行量、階段、運動量を調整することもあります。

湿布やサポーターだけで治す、という意味ではありません。
炎症を落ち着かせる対応と、負担が増えた理由の確認を一緒に行うことが大切です。

サポーターは負担を減らしながら生活するための補助です

サポーターを着けると膝への不安が減り、歩きやすいと感じる方がいます。
完全に休むか、我慢して動くかの二択にせず、生活を保つための補助として使います。

膝蓋下脂肪体の痛みに対する一般的な膝サポーターの治療効果は、質の高い研究で十分に確認されていません。
そのため、サポーターを脂肪体を治す道具とは考えません。

使う場合は、次を確認します。

  • 着けると歩きやすいか
  • お皿の下を直接強く圧迫していないか
  • しびれや冷たさが出ていないか
  • 皮膚の赤み、かゆみ、かぶれがないか
  • 外したあとや翌日に痛みが増えていないか

装着すると痛みが増える場合は外してください。楽になっても、歩行量や運動量を急に増やさないようにします。

休むだけが治療ではありません

歩くだけでも強く痛む、膝が大きく腫れているといった時期は、休む必要があります。

症状が落ち着いている範囲では、日常生活に必要な動きを残しながら、何を一時的に減らすかを考えます。

調整するもの

具体的な方法

歩行

長時間歩行を減らし、外出を短く分ける

買い物

まとめて済ませず、休憩を入れる

階段

必要のない往復を減らし、手すりを使う

立ち仕事

同じ姿勢を続けず、座る時間を入れる

運動

距離、回数、重さ、深さを一度に増やさない

種目

痛みが出る動作だけを外し、負担の少ない運動を残す

調整したあとは、動いている最中、終わった直後、翌朝の反応を見ます。

その場では平気でも、あとから痛みや腫れが増える場合は、今の量が多かった可能性があります。

放置しない方がよい理由

必要以上に怖がる必要はありません。
ただ、痛みを我慢したまま動き続けることもおすすめしません。

お皿の下をかばう状態が続くと、立ち方や歩き方が変わり、歩幅や左右の荷重に差が出ることがあります。
その結果、反対側の膝、股関節、腰などへ負担が移る場合があります。

痛みのために外出や運動が大きく減れば、活動量や筋力が落ちることもあります。
また、変形性膝関節症に伴う症状が一緒にある場合は、どの動作でどこが痛むのか整理しにくくなることもあります。

放置すれば必ず変形が進む、という意味ではありません。痛みが続くときは、早めに今の状態を確認し、必要な負担調整を行うことが大切です。

自宅でできること

痛むところまで膝を伸ばし切らない

立っているときに膝を後ろへ押し込む、運動で勢いよく伸ばし切るなど、痛みを再現する動作は一時的に減らします。

膝をまったく伸ばさないという意味ではありません。
痛みが強く出る最後の範囲を避け、楽に動かせる範囲を残します。

痛みが出にくい範囲で曲げ伸ばしを行う

椅子に座った状態や仰向けで、痛みを強くしない範囲の曲げ伸ばしを行います。反動をつけず、無理に最後まで伸ばし切りません。

運動後や翌日に痛みや腫れが増える場合は、範囲や回数を減らすか中止します。

股関節と足首も軽く動かす

股関節や足首が動かしにくいと、歩行や階段で膝の使い方が変わることがあります。膝を強く押さずにできる股関節や足首の運動を、無理のない範囲で行います。

筋力を落としすぎない

症状が落ち着いていれば、高めの椅子からの浅い立ち座りなど、膝のお皿の下へ痛みが出にくい運動を選ぶことがあります。

深くしゃがむことや、回数を多くこなすことが目的ではありません。

靴と活動量を一緒に確認する

新しい靴へ替えた時期、靴底の摩耗、足とのフィット感を確認します。
靴だけを原因にせず、その時期に歩行量や立ち時間も増えていなかったかを振り返ります。

痛いところを強く揉まないでください

痛む場所が分かると、そこをほぐしたくなるかもしれません。

膝蓋下脂肪体は神経が豊富で、圧迫によって痛みを再現することがある組織です。
痛む場所へ強い刺激を繰り返すと、症状が増える場合があります。

  • 膝蓋腱の左右を指で強く押し続ける
  • お皿の下へマッサージガンを当てる
  • ローラーで前側を強く圧迫する
  • 痛みが出るまで何度もセルフテストをする

こうした方法は避けてください。

当院では膝だけで判断しません

当院では、痛む場所だけでなく、次の点を確認します。

  • 膝の曲げ伸ばしと、伸ばし切ったときの反応
  • お皿の下を軽く触れたときの反応
  • 股関節、骨盤、足首の動き
  • 立ったときの左右の荷重
  • 歩幅、つま先の向き、膝を反らせる立ち方
  • 靴のフィット感や摩耗
  • 仕事、家事、通勤、買い物での活動量
  • 運動の種類、頻度、強度を変えた時期

変形性膝関節症という診断名だけで決めつけず、今のお皿の下へ負担が集まりやすい条件を探します。

必要な場合は、整形外科など医療機関での検査を優先します。

MRIの変化だけでも決められません

MRIは、脂肪体のむくみ、炎症、線維化などを確認するために使われます。
別の病気やケガを見分けるうえでも大切な検査です。

一方、MRIで脂肪体のむくみが見つかっても、それだけで今の痛みの発生源と確定することはできません。
症状がない人にも同様の所見が見られることがあります。
MRI所見と臨床症状の関連を調べた研究

画像と、痛む場所や動作を照らし合わせて判断します。

こんな症状は医療機関で確認してください

次のような場合は、セルフケアより整形外科など医療機関での確認を優先してください。

  • 急に膝が強く腫れた
  • 強い熱感や赤みがある
  • 発熱を伴う
  • 転倒、衝突、ひねりなどの外傷後から痛い
  • 体重をかけられない、歩けない
  • 膝が引っかかって動かない
  • 繰り返し膝崩れする
  • 安静時や夜間も強く痛む
  • 短期間で急激に悪化した
  • 負担を調整しても長期間改善しない

「膝蓋下脂肪体の痛みだろう」と自己判断して放置しないことが大切です。

膝蓋下脂肪体の痛みについてよくある質問

何もしていないのに痛くなることはありますか

大きな外傷がなく、はっきりした原因を思い出せないことはあります。
旅行、買い物、歩行量、階段、立ち仕事、運動量などが普段より増えていなかったかを振り返ります。

若くても起こりますか

はい。スポーツ、ランニング、ジャンプ、打撲、膝を反らせる動作などをきっかけに、若い人でも症状が出ることがあります。

変形性膝関節症とは違うのですか

別の言葉ですが、同じ膝に両方が存在することもあります。
症状だけで完全に分けるのは難しいため、画像、痛む場所、動作、腫れ、可動域などを合わせて確認します。

レントゲンで変形と言われました。
それが原因ではないのですか

変形が痛みに関係している可能性はあります。
ただ、レントゲン上の変化と、今感じている痛みの場所や強さが常に一致するとは限りません。
今のお皿の下の痛みを改めて確認することが大切です。

湿布は使った方がいいですか

痛みが出始めた時期に、消炎鎮痛成分を含む湿布や塗り薬で症状を抑えることは選択肢です。
湿布だけで治すものではなく、痛みを増やしている動作や活動量の調整も行います。
皮膚トラブルが出る場合や、使用する薬に迷う場合は医師または薬剤師へ相談してください。

サポーターは使っていいですか

着けると歩きやすく、不安が減る場合は補助として使うことがあります。
お皿の下を強く圧迫する、しびれる、皮膚がかぶれる、痛みが増える場合は外してください。

歩いた方がいいですか 休んだ方がいいですか

歩くほど痛みが増える、かばわないと歩けない、歩いたあとや翌日に腫れや痛みが増える場合は量を減らします。
短い歩行で症状が増えず、翌日も変わらない場合は、その範囲を残せることがあります。

痛いところを揉んでもいいですか

強く揉むことはすすめません。
指で押し続ける、マッサージガンやローラーで圧迫すると、症状が増える場合があります。

どのくらいで良くなりますか

一律の期間では答えられません。
痛みの強さ、続いている期間、腫れ、膝の動かしにくさ、仕事や運動で必要な負荷、別の膝の問題が一緒にあるかで変わります。
日数だけで急いで戻さず、日常生活中と翌日の反応を見ながら調整します。

お皿の下の痛みで対応に迷っている方へ

膝蓋下脂肪体は、お皿の下で膝蓋腱の奥側にある組織です。
押したときや膝を伸ばし切ったときの痛みに関係することがあります。

大きなケガがなくても、旅行、買い物、歩きすぎ、慣れない靴、運動量の増加などが重なったあとに気になり始めることがあります。

年代によっては変形性膝関節症と診断されることもありますが、診断名だけで必要以上に焦る必要はありません。今痛んでいる場所と動作を確認し、痛み始めは炎症を落ち着かせながら、お皿の下へかかる負担を減らします。

必要以上に怖がらず、痛みを我慢して放置もしない。

沼袋ゆうしん整体接骨院では、膝の曲げ伸ばし、股関節、骨盤、足首、立ち方、歩き方、靴、活動量まで確認し、今の状態に合う対応をご提案します。
医療機関での確認が必要な状態では、受診を優先してご案内します。

この記事の文献について

この記事は、2026年9月11日までに確認できた解剖研究、画像研究、臨床レビュー、系統的レビューをもとに、患者さん向けに内容を整理しています。

主な文献:

  1. Dragoo JL, et al. Evaluation and treatment of disorders of the infrapatellar fat pad(2012)
  2. Stephen JM, et al. The infrapatellar fat pad is dynamic during knee motion(2018)
  3. Bohnsack M, et al. Distribution of substance P nerves inside the infrapatellar fat pad(2005)
  4. De Smet AA, et al. Superolateral Hoffa fat pad edema and clinical symptoms(2012)
  5. Draghi F, et al. Hoffa’s fat pad abnormalities and MRI findings(2016)
  6. Abelleyra Lastoria DA, et al. Predisposing factors for infrapatellar fat pad syndrome(2023)
  7. Bedson J, Croft PR. The discordance between clinical and radiographic knee osteoarthritis(2008)
  8. Belluzzi E, et al. Infrapatellar fat pad and osteoarthritis pain(2019)
  9. Derry S, et al. Topical NSAIDs for acute musculoskeletal pain in adults(2015)
  10. Wang MG, et al. The infrapatellar fat pad in knee health and osteoarthritis(2024)